退院支援委員会の開催について

精神保健福祉法

精神保健福祉法の平成26年改正にともなって、精神科病院の管理者に医療保護入院の退院促進に関する措置を講ずる義務が課されることとなりました。

その具体的な内容の一つが「退院支援委員会の開催」です。

退院支援委員会は、医療保護入院が本人の同意を得ることなく行われる入院であることをふまえ、人権擁護の観点から可能な限り早期治療・早期退院ができるようにと開催の運用が定められたものです。

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退院支援委員会の目的

退院支援委員会は、医療保護入院の継続が必要かどうか審議する体制を整備するとともに、入院が必要とされる場合の推定される入院期間を明確化し、退院に向けた取組みについて審議を行う体制を整備することで、病院関係者が退院促進に向けた取組みを推進するために設置することとされています。

退院支援委員会の対象者

退院支援委員会の対象者は医療保護入院によって入院している患者さんです。

入院期間が1年未満

初回は、入院するときに入院診療計画書に記載された「推定される入院期間」を経過するにあたり開催されます。

2回目以降は、前回の退院支援委員会で入院継続となった場合で、継続の推定される入院期間を経過するにあたり開催されます。

  • 開催時期は入院期間を経過する時期のおおむね2週間以内
  • 推定される入院期間は原則として1年未満の期間を設定すること
  • 推定される入院期間が経過するおおむね1か月以内の退院が決まっている場合は委員会での審議を行う必要はないこと

入院期間が1年以上

入院期間が1年以上の医療保護入院者であって、病院の管理者が退院支援委員会での審議を必要とみとめる場合にも退院支援委員会を開くこととなっています。

ちなみに、医療保護入院が1年を超える場合には「定期病状報告書」という書式を保健所と県に提出します。

入院期間が1年以上で、退院支援委員会を開かない場合には、開催しない具体的な理由を定期病状報告書に記載しなければなりません。

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退院支援委員会の出席者

退院支援委員会に想定される出席者は以下のとおりです。

① 主治医
② 看護職員(担当する看護職員が望ましい)
③ 退院後生活環境相談員
④ ①~③以外の病院管理者が出席を求める病院職員
⑥ 本人
⑥ 家族等
⑦ 地域援助事業者そのほか本人の退院後の生活環境に関わるもの

③の「退院後生活環境相談員」とは医療保護入院で患者さんが入院するにあたって選任される相談員です。

おもに精神保健福祉士が選任されますが、一定期間以上精神障害者に関する業務に従事した看護職員、作業療法士、社会福祉士等も選任される資格を有します。

退院支援委員会の開催方法

退院支援委員会で審議する内容は次のとおりです。

① 入院継続の必要性の有無とその理由
②入院が必要な場合の推定される入院期間
③ 退院に向けた取組み

退院支援委員会の開催は、十分な日時の余裕を持って本人に別添様式1(医療保護入院者退院支援委員会の開催のお知らせ)の例により通知し、通知を行った旨を診療録(カルテ)に記載することとされています。

審議の結果は別添様式2(医療保護入院者退院支援委員会審議記録)に記録するとともにカルテには開催日を記載します。

審議の結果はすみやかに本人や出席した家族等・関係者に別添様式3(医療保護入院者退院支援委員会結果のお知らせ)によって通知します。

様式は厚生労働省ホームページの「福祉・介護>障害者福祉>各種様式について」という箇所から引用しています。

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当時の業務を振り返って

以前勤務していた精神科病院では、退院支援委員会の一連の事務は精神保健福祉士がしていました。当時の業務を振り返りました。

病院によってやり方は異なりますが、精神科病院希望の専門職の方のご参考になるかもしれません。

まず患者さんご家族への説明について印象的だったこと。

退院支援委員会という名称ゆえ、退院という言葉に敏感に反応するご家族が少なからずいました。

入院のときの説明で、退院後生活環境相談員に選任した旨や、退院支援委員会についてご本人と家族に説明しますが、例えばやっとの思いで入院先が見つかった場合などは、いくぶん驚いた反応を示されることがありました。

それまで自宅や施設で症状が顕著で家族やスタッフの負担が大きかったり、個別の事情でなかなか入院先が決まらなかったりした場合などでした。

そのようなときは退院支援委員会の意義や退院に向けて相談員がついていることをできるだけていねいに説明し、ご家族の理解を得られるよう努めていました。

次に病院職員との協力について。とにかくみなさん多忙です。

退院支援委員会の大切さを認識しているスタッフももちろんいますが、みんながみんなそうとは限りません。

会議を形式的なものと捉える関係者もいました。

つい何年か前まではなかったものなので、昔のやり方に慣れている人は無理もないことかもしれません。

精神保健福祉法で、退院後生活環境相談員は開催に向けた調整や運営の中心的役割を果たすこととされています。

相談員である精神保健福祉士が率先して開催の段取りを調整し、万一形式的な会議と思っているスタッフがいたら意識を変えていこうくらいの気持ちを持っていていいと思います。

出席者との日程調整、開催日時の伝達や審議録作成などなど開催運営に係る一連の事務は楽なものではありませんが、いずれも誰かがしなければならない大切な作業です。

患者さんが退院後、地域でその人らしい生活を送る準備段階として退院支援委員会をぜひ意義ある会議にしてもらいたいと思います。