退院後生活環境相談員の役割とは

精神保健福祉法

精神保健福祉法の平成26年改正に伴い、精神科病院の管理者に医療保護入院の退院促進に関する措置を講ずる義務が課されることとなりました。

その具体的な内容で、「退院支援委員会の開催」にならび「退院後生活環境相談員の選任」があります。

今回はこの退院後生活環境相談員の役割について解説します。

退院支援委員会の開催についてはこちらからご覧いただけます。

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退院後生活環境相談員の選任について

まず前提として、退院後生活環境相談員は医療保護入院で入院した患者さんに選任されます。

医療保護入院は本人の同意を得ることなく行われる入院であるため、権利擁護の観点から可能な限り早期治療・早期退院ができるようにしなければならないとされています。

医療保護入院の患者さんが可能な限り早期に退院できるよう、退院支援の中心的役割を求められるのが退院後生活環境相談員となります。

退院後生活環境相談員の役割とは

退院後生活環境相談員の責務・役割は厚生労働省の通知によって次のように示されています。

  • 退院後生活環境相談員は、医療保護入院者が可能な限り早期に退院できるよう、個々の医療保護入院者の退院支援のための取組において中心的役割を果たすことが求められること。
  • 退院に向けた取組みにあたっては、医師の指導を受けつつ、多職種連携のための調整を図ることに努めるとともに、行政機関を含む院外の機関との調整に努めること。
  • 医療保護入院者の支援にあたっては、当該医療保護入院者の意向に十分配慮するとともに、個人情報保護について遺漏なきよう十分留意すること。
  • 以上の責務・役割を果たすため、退院後生活環境相談員は、その業務に必要な技術及び知識を得て、その資質の向上を図ること。

言い換えると、医師の指導を受けつつ患者本人の意向に十分配慮し、職種・機関の枠を超えて中心となって退院支援の調整にあたること、といったところです。

「医師の指導を受けつつ」というのは、退院できる状態かの見込みや判断ができるのは主治医であるため、「医師の指導を受けつつ」となります。

ちなみに退院後生活環境相談員の配置の目安は下記のとおりです。

退院後生活環境相談員1人につきおおむね50人以下

また入院後7日以内に選任することとなっています。

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退院後生活環境相談員の資格

退院後生活環境相談員として必要な資格は次のとおりです。

  • 精神保健福祉士
  • 保健師、看護師、准看護師、作業療法士又は社会福祉士として、精神障害者に関する業務に従事した経験を有する者
  • 3年以上精神障害者およびその家族等との退院後の生活環境についての相談および指導に関する業務に従事した経験を有する者であって、かつ、厚生労働大臣が定める研修を修了した者。

私が勤務していた病院では、精神保健福祉士が受け持ち患者さんの退院後生活環境相談員になっていました。

上を見ておわかりのように制度上は精神保健福祉士ではなくても、精神障害者に関する業務に従事した経験があり条件を満たせば退院後生活環境相談員としての資格があります。

退院後生活環境相談員の業務内容

退院後生活環境相談員の業務は次のようなものがあります。

  • 入院時の業務
  • 退院に向けた相談支援業務
  • 地域援助事業者等の紹介に関する業務
  • 退院支援委員会に関する業務
  • 退院調整に関する業務
  • 定期病状報告の退院に向けた取組み欄の記載
    相談状況をふまえて退院後生活環境相談員が記載することが望ましい。
  • その他の業務

入院時の業務とは、ご本人およびご家族等に対して、退院後生活環境相談員の選任とその役割について説明することです。

選任にあたっては口頭だけではなく、書面を使ってご本人に説明しお渡しします。

その他の業務とは、医療保護入院から任意入院に入院形態を切り替えた場合のケースです。その場合は、本人が地域生活へ移行するまでは、継続して退院促進のための取組みを行うことが望ましいとされています。

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精神保健福祉士として大切な視点

精神科病院での経験をふまえ、退院支援で大切にしたいと感じた視点をお伝えします。

退院支援において一番大切なのは、患者さんご本人の気持ちや地域でどんな生活がしたいか、ご本人の思いや希望に沿った支援に向けていくことです。

次に大切なのは、精神保健福祉士が退院支援におけるスタッフ間の理解を深めていくことだと思います。

病院には医師、看護師、技師など精神保健市福祉士以外の専門職のスタッフが多数います。

退院支援は1人でできることではありません。

制度をうまく利用して、多職種と連携していくことが大切です。

退院後生活環境相談員は平成25年の精神保健福祉改正後に導入されました。

同じときに退院支援委員会の開催も義務付けられました。

そのため、新しい制度を業務量の増加と感じる相談員の声もあったようです。

私は法改正後に資格を取得し、実習先でも専門職種が集まり退院支援委員会がきちんと開催されていました。

実習先の精神科病院では、患者さんのためにどう制度を使うかという考え方を学ばせてもらいました。

それは、新しいことを「面倒、手間」と捉えるのではなく、逆にこちらが退院支援に向けて多職種と連携する材料・手段にするというものでした。

じつはそのとき、それが意味するところは正直あまりわかっていませんでした。

実際に自分が精神科病院に勤務し、相談員として退院支援委員会の開催や調整に携わるようになって、その意味を実感しました。

一言に多職種といっても、みなそれぞれ患者さんと関わる目的が異なります。

看護師の方は看護がおもな業務で24時間交代制です。

医師は病気の見立てや治療方針などを患者さんの症状を診て判断します。

他の専門職種もそれぞれの役割があり、退院支援をおもな業務とはしていません。

そして概して病院のスタッフは多忙です。

実際に、関係職種の方を集めて開催する退院支援委員会の日程を調整するのは簡単ではありませんでした。

しかし続けていくうちに、ほかの専門職種のスタッフから事前に都合のいい日にちを教えてもらえるようになったり、業務スケジュール上どうしても出席できないときは、会議用にご本人の近況や課題を事前に記録でいただけたり、少しずつですが定着していく様子が実感として得られました。

多忙さに理解を示しつつも、精神保健福祉士は自分の仕事として退院支援の重要性を発信して、スタッフの退院支援の理解を深めていくことも大切だと感じました。