【医療保護入院】市長同意入院の流れ

精神保健福祉法

入院治療が必要な状態で患者本人の同意が取れず、家族がいない場合には市町村長の同意による入院があります。


市長村長が行う入院同意は精神保健福祉法第33条3に規定されています。

第33条3

精神科病院の管理者は、第1項第1号に掲げる者について、その家族等がない場合またはその家族等の全員がその意思を表示することができない場合において、その者の居住地を管轄する市町村長(特別区の長を含む。)の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

本文とタイトルでは、「市町村長(特別区の長を含む。)の同意」は「市長同意」として省略しています。

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市長同意入院の対象となるケース

次のすべての要件を満たす場合に市長同意入院の対象となります。

  • 指定医の診察の結果、精神障害者であって、入院の必要があると認められること
  • 措置入院の要件に該当しないこと(措置入院の要件にあてはまるときは措置入院とすること)
  • 入院について本人の同意が得られないこと(本人の同意があるときは任意入院となること)
  • 当該精神障害者の家族等のいずれもいないが、またはその家族等の全員がその意思を表示することができないこと

病院からの同意依頼

病院は、入院する患者について、居住地、家族等のうちいずれかの者の有無等を調査し、当該患者が入院につき市町村長の同意が必要である場合には、すみやかに市町村長の同意の依頼を行う必要があります。

さらに同意の依頼は迅速に行われなければなりません。

このため、同意の依頼は電話や口頭で行うことができますが、依頼後はすみやかに同意依頼書を市長村長宛て送付しなければなりません。

私が精神科病院で対応したケースでは、最初は電話とFAXで連絡を取りあい、後日正式に書面が届いたと記憶しています。

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市町村にて行われる手統き

じつは市町村で行われる手続きもあらかじめ下記のように決められています。

  1. 担当者は電話等で入院の同意の依頼を受けた際には、聴取表に記載して明らかにしておくこと
  2. 担当者は患者が市長同意の入院の対象者であるかどうかを確認する手続きをとること
  3. 市長同意入院の対象者であることを確認のうえ、すみやかに同意の手続きをとること
  4. 市町同意が行われた場合はすみやかにその旨を病院に連絡すること。口頭で連絡した場合においてもその後すみやかに同意書を作成して病院に交付すること。同意書の日付は口頭で連絡を行った日にすること
  5. 同意後、担当者はすみやかに本人に面会し、その状態を把握するとともに市町村長が同意者であることおよび担当者連絡先、連絡方法を本人に伝えること

家族の存在が明らかなとき

例え患者本人と家族が長らく音信不通の状態でも、家族の居所が明らかな場合は注意が必要です。

住民票で確認されている居所に、居住実態がない、お手紙を送っても毎回返戻になるなど仮にそのような事実があれば、居所不明で家族の意思が確認できないという判断に至ると思います。

しかしただ連絡を取りあっていないだけ、家族の居所が明らかな場合に市長同意入院は適当ではありません。

医療保護入院の同意者になり得る直系親族の家族が、市長同意の入院後、後々になって入院に同意していないという意思を表明する可能性がないとはいえません。

また最終的に入院同意した自治体に対して訴訟を起こす可能性もゼロとはいえないと思います。

家族の存在が明らかなときは、家族等の全員が意志を表示することができないと判断するに足りる何らかの根拠が必要と考えられます。

読者の方で、身寄りがない方の入院支援で市長同意入院に携わるケースもあるかと思います。

急ぎのケースでも正式な手続きを経なければならないため、支援関係者の方は普段から市長同意入院の流れを知っていただけたらと思います。

お読みいただきありがとうございました。

医療保護入院、家族等の同意による入院については下記をご覧ください。