精神保健福祉法では、精神科病院の管理者が一定条件のもとに、入院患者に行動制限を加えられる旨が規定されています。
行動制限に関する規定は、精神保健福祉法の第5章医療及び保護 第4節精神科病院における処遇等に定められています。
条文(抜粋)は下記のとおりです。
(処遇)第36条
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その医療または保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができる。
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行動制限を行うことができる場合
行動制限は、「医療または保護に欠くことのできない限度」においてのみ可能とされています。
また、行動制限の内容等は必ず診療録に記載しなければなりません。
患者はもとより、家族等や関係者(ケースワーカー等)にも行動制限の内容、目的、理由等をできる限り詳細に告知し十分な理解が得られるよう努めなければなりません。
行動制限は、患者の病状または状態像に応じて合理的と認められる必要最小限の範囲で行われる必要があります。
行動制限を行うにあたっては、患者にできる限り説明した上で制限を行うよう努めるとともに、病状または状態像に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないとされています。
どのような場合でも行うことのできない行動制限
通信や面会は原則として自由に行われる必要があるとされていて、どのような場合でも行うことのできない行動制限は次のとおりです。
信書の発受の制限
刃物、薬物等の異物が同封されていると判断される受信信書について、患者によりこれを開封させ、異物を取り出した上患者に当該受信信書を渡すことは制限に含まれません。
代理人弁護士などとの電話
都道府県および地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員、ならびに患者の代理人である弁護士との電話の制限を指しています。
代理人弁護士などとの面会
都道府県および地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員、ならびに患者の代理人である弁護士、および患者またはその家族等その他の関係者の依頼により代理人になろうとする弁護士との面会の制限を指しています。
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指定医が必要と認めなければ行うことができない行動制限
精神保健指定医が必要と認めなければ行うことができない行動制限は次のとおりです。
患者の隔離
内側から患者本人の意思によっては出ることができない部屋の中に一人だけ入室させることにより、当該患者を他の患者から遮断する行動の制限をいい 12時間を超えるもの。
12時間を超えない隔離については指定医の判断を要するものではありませんが、この場合にあってもその要否の判断は医師によって行われなければなりません。
身体的拘束
衣類または綿入り帯等を使用して、一時的に患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいいます。
診療録に記載する事項
行動制限は「医療または保護に欠くことのできない限度」においてのみ認められています。
行動制限の理由、方法等が医療または保護のために欠くことのできないものであったことを担保する意味においても行動制限の内容等は診療録に記載されなければなりません。
- 行動の制限を必要と認めた指定医の氏名
- 行動制限の内容
- 行動制限を開始した年月日および時刻ならびに解除した年月日および時刻
- 行動制限を行ったときの症状
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行動制限について学んだきっかけ

私は精神保健福祉士になったときから行動制限について詳しく知っていたわけではありません。
むしろ国家試験で細かく問われることはないため、保護室の存在以外は現実をほぼ知らなかったと思います。
行動制限について自ら学んだのは国家試験に合格し、精神科病院で働き始めてからのことでした。
資格を持っている以上、周囲のスタッフは当然私を一精神保健福祉士として見ます。
私の経験年数があろうとなかろうと、周囲が知るところではなく言い訳はできません。
そして入職してすぐに、おそらく精神科以外からきた多職種のスタッフに行動制限について聞かれることが重なり「これではいけない」と思い調べ始めました。
また精神保健指定医の先生も当然私が知っているものとして接してきました。
精神科病院で行動制限は必要最小限の範囲で治療の一環として行われます。
しかし一部で不適切なケースがあり人道上大きな問題となっているのも事実です。
本人の自由を制限する行為は、人権の観点からは本来はしてはならないことで不当な制限は罪に問われます。
精神科病院における行動制限は、精神科で扱う病気の特性から法律によってその権限が認められています。
行動制限について学んでからは、その権限の重さについて考えています。