【精神科の入院形態】応急入院について解説

精神保健福祉法

精神科の入院形態で「応急入院」について解説します。

それ以外の入院形態で任意入院と医療保護入院、措置入院はすでに別記事で説明しています。

こちらからご覧いただけます。

応急入院とは

応急入院とは、緊急に入院治療が必要な状態で、家族等の同意を得ることができない場合に、本人の同意がなくても、精神保健指定医の診察により72時間に限り応急指定病院に入院させるというものです。

応急入院に関する規定は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第33条の6に規定されています。

(応急入院)第33条の6
厚生労働大臣の定める基準に適合するものとして都道府県知事が指定する精神科病院の管理者は、医療および保護の依頼があった者について、急速を要し、その家族等の同意を得ることができない場合において、その者が、次に該当するものであるときは、本人の同意がなくても、72時間を限り、その者を入院させることができる。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

特定医師の診察による場合は入院期間の制限が12時間になります。

精神保健指定と特定医師が診察した場合の入院期間の制限のちがいは下記のとおりです。

精神保健指定医が診察
精神障害者 かつ ただちに入院が必要だが本人病識がない等任意入院の同意が得られない
72時間以内の入院可

特定医師が診察
精神障害者 かつ ただちに入院が必要だが本人病識がない等任意入院の同意が得られない
12時間以内の入院可

応急入院は、入院治療が必要という医学的判断のみで、本人や家族等の同意がない状態でなされるものです。

いわば誰の同意もない状態の入院形態であるため一般的ではないといえます。

想定されるケース

応急入院で想定されているケースについてです。

誰の同意も得られないというのは一体どのような状況でしょうか。

それは単身者や昏迷状態にあり身元不明であるなど、入院にあたり本人の同意が得られず、家族等とも連絡がつかない場合が想定されています。

応急入院は、本人・家族等の同意を得ず、医学的判断のみの入院であるため、患者の人権保護の観点から厳しい要件が規定されています。

対象となるのは、自傷他害のおそれはないが、昏迷状態、恐慌状態、興奮状態、意識障害等の状態にあるため、ただちに入院させなければ患者本人の予後に著しく悪影響を及ぼすおそれがあると判断される場合に限られています。

応急入院にならないケース

患者本人に自傷他害のおそれがあれば措置入院または緊急措置入院対応となります。

また、家族等の同意が得られる場合は医療保護入院で対応します。

応急入院自体は一般的ではありませんが、精神保健福祉士として、また精神保健福祉士の国家試験対策にも入院形態の知識は必須です。

受験予定の方は内容を理解して整理しておくことをおすすめします。