【精神科の入院形態】措置入院の流れを解説【令和6年4月以降】

精神保健福祉法

精神科の入院形態で「措置入院」の流れと「緊急措置入院」について解説します。

任意入院と医療保護入院についてはすでに別の記事で説明しています。

こちらからどうぞ

措置入院とは

措置入院とは、精神保健指定2名が患者を診察し、患者が精神障害者かつ、入院が必要で自傷他害のおそれがある場合に都道府県知事の権限により入院させる入院形態のことをいいます。

都道府県知事による措置権の行使は行政処分にあたります。

措置入院に関する規定は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第29条に定められています。

以下は条文の一部引用です。

(都道府県知事による入院措置)

第29条 都道府県知事は、第27条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

2 前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには、その指定する二人以上の指定医の診察を経て、その者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めることについて、各指定医の診察の結果が一致した場合でなければならない。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

申請または通報

では精神保健指定医の診察に至るまでにはどのような流れがあるのでしょうか。

第29条の一行目部分「第27条の規定」にそれが示されています。

第27条を見てみましょう。

(申請等に基づき行われる指定医の診察等)

第27条 都道府県知事は、第22条から前条までの規定による申請、通報又は届出のあつた者について調査の上必要があると認めるときは、その指定する指定医をして診察をさせなければならない。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

22条から26条までの規定による申請、通報または届け出というのは次のとおりです。

(診察及び保護の申請)第22条

(警察官の通報)第23条

検察官の通報)第24条

(保護観察所の長の通報)第25条

(矯正施設の長の通報)第26条

23条通報とは

措置診察に至る申請または通報は、警察官による23条通報がその大半を占めています。

参考のため23条の内容は以下のとおりです。

(警察官の通報)

第23条 警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

23条通報が受理されても状況によっては措置診察に至らない場合もあります。

また措置診察の結果で、措置入院に至らない場合も当然あります。

措置入院に関する変更点【令和6年4月施行】

令和6年4月から、措置入院時にも精神医療審査会において、入院の必要があるかどうかの審査が必要となりました。

また、措置入院者についても退院後生活環境相談員の選任が義務化されました。

退院支援にあたっての地域援助事業者の紹介の義務化が、措置入院者についても適用されました。

緊急措置入院とは

緊急措置入院は第29条の2に規定されています。

緊急措置入院は、精神保健指定1名が患者を診察し、患者が精神障害者かつ、入院が必要で自傷他害のおそれが著しい場合に都道府県知事の権限により、72時間を超えない限りで入院させる入院形態のことをいいます。

緊急措置入院は通常の措置入院に比べて、より簡略な手続きで措置権限を行使するものであるため、措置入院の症状よりも自傷他害のおそれが著しいと認められる場合が該当するとされています。

措置入院は権限を行使した行政処分であり、本人も家族等の同意も入院の要件に含まれていません。

措置入院を要するかどうかの診察に至る流れを含めて解説しました。

法改正により、従前の制度が措置入院者に対しても新たに適用されるなど、地域生活の移行促進の措置が拡大された印象です。

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