【精神科の入院形態】任意入院と医療保護入院

精神保健福祉法

精神科の入院形態にはいくつか種類があります。

今回は「任意入院」と「医療保護入院」について話題にしたいと思います。

精神科病院と聞くと、「強制入院」という言葉を連想される方も少なくないと思います。

しかし「強制入院」という言葉は実際の現場ではあまり使われていません。

使う人は、おそらく本人の意思に反するという意味で使われていると思います。

しかしそれにしても治療上必要な入院で、本人の同意が得られないときに限られており、本人の人権を侵害することがないように配慮された仕組みになっています。

なお根拠となる法律は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」となっています。

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原則は任意入院

任意入院とは言葉のとおり、本人の同意による入院です。

原則としては本人の意思によって入院治療が行われる必要があります。

また任意入院の場合は開放環境が原則です。

開放環境と言うのは、自由に出入りができる環境ということです。

開放環境ではないのが閉鎖病棟にあたります。

原則は開放環境ですが、本人が閉鎖病棟への入院に同意した場合にはその限りではありません。

ただし、閉鎖病棟に本人の意思で入ったという同意書を必ず書面で残しておく必要があります。

また任意入院は本人の意思でいつでも退院することが可能です。

いつでも自分の意思で退院できる、というのが原則ではありますがその際に精神保健指定医が診察をして、入院の継続が必要と認めた場合には72時間以内に限り退院制限をすることができます。

医療保護入院【本人の同意が得られない場合】

精神保健指定医の診察の結果、入院が必要と認められた患者について、本人の入院の同意がどうしても得られない場合に、家族等のうちいずれかの者の同意による入院をいいます。

平成26年に廃止されましたがかつては「保護者制度」というものがありました。

保護者制度において保護者は、本人に治療を受けさせること、財産上の利益を保護することなどの義務が課せられていました。

廃止に至るには、社会環境の変化や家族の高齢化などの状況に鑑み、保護者の負担が大きいのではないかという背景がありました。

現在の「家族等のうちいずれかのものの同意」において、家族等は入院時の一時の判断をするものであって保護者制度にあったような法的な義務はありません。

この「家族等のうちいずれかの者」というのは3親等以内の親族に限られています。

具体的には配偶者、父母、祖父母、子、孫、兄弟姉妹、後見人または補佐人に限られます。

おじ・おば・甥・姪は家庭裁判所で扶養義務者としての選任を受けている場合に同意者として認められます。

おじ・おば・甥・姪がキーパーソンで、3親等内の親族が近くにいないケースは注意が必要です。

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人権を守るための仕組み

人権を守るための仕組み

精神科の入院は、本人の意思によらないものや自由に出入りができない環境など制約が多いため、人権を侵害することがないよう配慮された仕組みになっています。

まず入院に際し、入院の告知、入院の同意、開放環境の制限などすべて書面を用いることとなっています。

また入院中、通信・面会は自由に行わなければならないとされています。

具体的には手紙やはがきを受け取ったり送ったりということは制限されません。また病棟内に24時間使用可能な電話機が設置されている必要もあります。

医療保護入院を行った場合、病院は速やかに「入院届」という書面を同意書と入院診療計画書を添えて行政に提出します。

それによりその入院が不当なものではないか審査がなされます。

入院が長期に及ぶ場合には「定期病状報告書」、退院に際しては「退院届」を行政に提出することとなっています。

入院患者さんの人権が侵されることのないよう、制度は適正に運用されるべきです。

精神科病院は一般病院に比べてあまり知られていないというか、閉鎖的な面があると思います。

制度が適正に運用されるために、入院患者さんのプライバシーは当然守られながらも、病院自体が閉鎖的になり過ぎないよう外部の目が積極的に入っていくのが望ましいのではないかと私自身は考えています。