今回は、認知症ケア技法のユマニチュードについて、PSW(精神保健福祉士)の視点から気づいたことをお伝えします。
スポンサーリンク
ユマニチュードとは
ユマニチュードは、フランスの二人の体育学の専門家により考案された認知症のケア技法です。
フランス語で「人間らしさ」を意味し、認知機能が低下しても、安心や不安、大切な人への親近感など、感情は残るという考え方に基づいたケアの実践方法です。
人として基本的な「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの動作を尊重し、言語・非言語のコミュニケーションを取りつつ信頼関係を築いていきます。
以下は「認知症と生きる」という見出しの新聞記事から、ユマニチュードに関する箇所の引用です。
フランスでは400超の施設が導入。ドイツ、カナダなどに次ぎ、2014年に日本に6番目の国際支部ができた。福岡市は一般市民も対象に技法を紹介する講座を開催。認知症の人と接することが多い市の福祉関係の窓口や救急隊にも広めている。
2019年7月11日 日本経済新聞朝刊より引用
日本でも病院や介護施設で取り入れられているところがあるようです。
しかし、残念ながら日本ではまだ認知症の理解が進んでいるとは言い難い状況です。
福岡市の取り組みは大変素晴らしいと思います。
問題行動ばかりがクローズアップされるのではなく、解決の糸口となるユマニチュードの技法こそぜひ注目されるべきだと思います。
ユマニチュードについて知ったきっかけ

精神保健福祉士の試験に合格後、PSWとして精神科病院に採用されました。そこの院内研修でユマニチュードのDVDを見たのが、ユマニチュードについて知ったきっかけです。
ユマニチュードは、介護拒否や大声、繰り返し同じことを尋ねる、攻撃的になるなどの、いわゆる問題行動とされる認知症の症状に対しても解決法を示します。
DVD中で研究者が示した実践は大変興味深いものばかりでした。例えば、ある方が夜にかけて不穏になることについてです。
これまでは症状の一つと思われていたものが、実際には昼間、処理しきれないほどのたくさんの情報が入ってきていたために、ご本人は不安を感じて症状につながっていたことが示されました。
そしてその対策として昼寝を促す例を挙げていました。
周りの工夫で、ご本人の不安を軽減させるということです。このような「工夫」がDVD中で数多く実践されていました。
スポンサーリンク
PSWの視点から
資格対策の受験勉強をするに当たり、精神疾患や認知症についても学習しました。
認知症については、脳の構造や機能について学び、疾患別の主症状や薬剤に関する知識を得ました。
その結果、認知症を患っている方を「患者様」として見るようになっていたと思います。病院は、治療を必要とされる方が入院されるため、その見方は間違ってはいませんでしたが、私自身はPSWとしてそれだけでは足りないことに気づくことができました。
ユマニチュードで、患者を「誰かの大切な人」「生活者」として接していることに大きな発見があったからです。
精神科病院のPSWの仕事には退院支援も含まれています。
自宅や施設に退院されるということは、生活者として地域に戻られることを意味します。
日ごろから、退院後の生活がご本人にとって急激な変化にならないよう、できる範囲で切れ目のない支援を心がけていましたが、そのためには生活者としての患者様と向き合う視点が必要なことに気が付きました。
DVDで 紹介されたような工夫はアイディアも必要であり、ケアする側のトレーニングが必要です。しかし中には、ご本人の目をしっかり見て正面から近づくなど、早速真似できそうな例もありました。
今は退職して病院は離れましたが、今後もこのときの発見を忘れずに、機会があればぜひコミュニケーションに取り入れたいと思います。